Translation by Yuri Karasawa and @takumabbetc

世界トップクラスのピッチャーの一人が、なるべく早くMLBでプレーすることを希望している。現時点で彼はどのようなピッチャーなのだろうか。弊誌のライター、ブランドン・テューは、すべての登板を観察し、評価を行った。

佐々木朗希は、理想的な球種と優れたコントロールを兼ね備えた、世界で最高の投手の一人だ。彼は競争力の高い日本プロ野球において三年連続で圧倒的な投球を見せている。今オフ山本由伸がロサンゼルス・ドジャースと契約した後、佐々木はNPBで最高の投手と言えるだろう。

佐々木はMLBでプレーする意志をロッテ球団に知らせているが、今のところ、彼は日本で少なくとも2024年シーズン、打者たちを苦しめ続けることになる。佐々木の最大のハードルは、シーズン全体を通じて健康を維持し、ローテーションを守ることだ。昨年佐々木は、7月下旬に左斜筋の怪我で2か月間欠場し、9-10月の先発登板はわずか3度だった。過去2シーズンの佐々木の先発を全て観た私の評価は以下の通りである。

Season IP ERA Strikeouts Walks K-BB%
2022 129 1/3 2.02 173 23 30.6%
2023 91 1.78 135 17 34.2%

佐々木の卓越した速球とフォークにより、 100マイル (160キロ) を超えるストレートから鋭く落ちるフォークボールを使い、2つの球種で相手を圧倒する投手だ。佐々木は2023年に質の高いスライダーを加えたが、半分以上はストレートに頼り続けた。

佐々木のストレートのコントロールと、ストライクゾーンの下にフォークを投げる安定性により、打者から多くの空振りを奪うことができる。 昨シーズンの彼のフォークの空振り率51.5%は、日本だけでなく、世界の全投手が投げるあらゆる球の中でも最高の球種の一つだと言える。

メカニクス

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佐々木は、常にセットポジションから投げ、細い体から爆発的な運動能力を発揮する。 右腕の彼はピッチャープレートの三塁側から前足を拾い上げ、膝を肩の高さ近くまで上げ、その背丈は188cmを誇る。

足を前に出して膝を軽く曲げ、空に向かってつま先を上げる。彼は足と膝を胸へと引き戻すことで、マウンドから降りる際に勢いを生み出す。この最初の前進動作中、彼は腰をとぐろを巻いて逆回転させている。足をセンターに向けて、前腰で体重を落として後ろ足を曲げるような動きをする。これは「ドロップアンドドライブ」と呼ばれる。

足が地面に着くとき、腕は必ずしも 90 度になるわけではないが、胸を三塁側に向け、腰を打者の方に向けることで、腰から肩までの距離は理想的である。彼のシーケンスは非常に理に適っていて、エネルギーがうまく流れるようになっている。車のアクセルを踏むかのような脚の動きにより、エネルギーを腕に伝えることができる。スムーズかつリズミカルな投球フォームにより、身体がアスリートのように流れ、スリークォーターのスロットから引き裂くような球が放出される。マウンドから降りるまで体が開かない。

球種別

ストレート 50.3%、 99 マイル (159.3 キロ)

佐々木の速球は彼の2つの傑出した球種のうちの1つである。 彼のフォーシームは、昨シーズン規定投球回数をクリアしたMLBの先発投手の中では、平均時速99.1マイルを記録したボビー・ミラーに次いで2位だ。 佐々木のストレートも最高時速162.5マイルを記録した。 彼は昨年3月のWBCで、世界の舞台でその豪快なストレートを披露した。

球速だけでなく、縦と横の変化も相まって、打者にとっては大きな凶器となる。 彼の速球には19 インチを超える Induced Vertical Break (速球の垂直変化量) と 15 インチの arm side run (投げ手側への横の変化) がある。彼はゾーンの上部に速球を投げ込むことで、理想的な一球を生み出すことができる。

佐々木は通常、ストライクゾーンの上部3分の1に向かってストレートを投げ、打者はボールの下を振ってしまう。彼がゾーン下部に投げる時、速球の横変化が打者のソフトコンタクトを生み、ゴロを打たせることができる 。彼がアームサイド(投手の投げ腕側、右投手の場合右側)の低めに制球できれば、右打者は詰まらされ、左打者にとってはボールが外角に逃げていく。

昨シーズンのストレートの空振り率は24%、ゴロ率は56%だった。打者は、ヒットを打てる唯一のチャンスと見て、ストレートに山を張って待つだろう 。 それでも、佐々木は昨シーズン、本塁打を1本しか許しておらず、彼のストレートは被打率.222、被OPS.592を記録した。

佐々木は通常、ストレートを打者から遠ざけようとし、たとえシュート回転があるとしても、グラブ側(右投手から見て自身のグラブがある左側)に一貫して投げ続ける。 より優れた左打者に対しては、打者の腕の下、つまり内角を狙うこともある。 彼はゾーンから数インチ離れた位置で投球を開始し、ゾーンの隅に戻そうとする。

佐々木に必要なのは、それなりのコントロールのみだ。。彼はゾーンの隅にストレートを完璧に配置する能力はある。 しかし、試合のほとんどで、彼はゾーン内で打者に挑戦し、ベース上を垂直または水平に二分割するように投げ分ける。速球の球速と変化は信じられないほどで、とにかくストライクを多く投げ込むだけで抑えることができる。彼の捕手は、捕手は、彼にただストライクゾーンに投げさようと、ストライクゾーンのど真ん中に構えることもあった。

フォーク 33.9%、89.7 マイル (144.3 キロ)
佐々木のフォークは彼の最高の球種であり、世界最高のスプリットかもしれない。千賀滉大選手のゴーストフォークに匹敵し、打者が空振りしたり追いかけたりする確率は驚異的に高い。佐々木選手のフォークの 2023 年の空振り率は 51.5% だった。比較すると、2022 年の NPB シーズンの千賀選手のフォークボールの空振り率は 52.3% であった。
佐々木のフォークは、ストレートと同じ角度で打者へ向かい、最後の瞬間で地面に向かって急降下する。彼のスプリットが生み出すトンネル効果により、特に低めのストレートとの見分けが非常に困難だ。メキシコ代表のランディ・アロサレーナ選手は、WBC で佐々木選手と対戦したときにこれを経験した。

佐々木は主にゾーン低めにフォークを集めるが、時折左打者に対して見逃しストライクを狙って高めに投げたり、ボールが抜けてしまってゾーン甘めに入ってしまうこともある。変化の仕方は不安定ながらも、佐々木はスプリットに対して一貫した感覚を持っているようだ。

ある程度意図的に行っていると思われるのは、右打者に対してはグラブサイドにカット気味に変化させ、左打者に対してはシュート気味に逃げてるように変化させるということだ。 彼はこれを頻繁に行っているため、スプリットの投球の際に指先で加える圧力を調整していると思われるが、意図的に行っているという確証は得られていない。彼がこの特定の球種で見せる投球術は、彼を野球界で唯一無二の怪物にしており、その投球に対する一貫性も同様に印象的である。

Pitching Ninja によるこのビデオでは、佐々木がフォークで生み出すカットの動きと、右打者としてその球捉えるのがいかに難しいかを見ることができる。

ゴロ率70.5%、被OPS.272という驚異的な数字と、被打率.101を誇る投球は特別な武器だ。

スライダー 14%、87.5 マイル (137.9 キロ)

佐々木が頼もしい3球目として取り組んでいる球種はスライダーだ。 2022年にはカーブとスライダーをそれぞれ5パーセント程度使用していたが、昨シーズンはスライダーの使用率を14パーセントに増やし、カーブを廃止した。

彼は主にスライダーでゾーンの底、グラブ側をターゲットにし、主に右打者にそれを使用して投球構成を多様化した。スライダーの制球が定まらなかったこともあったが 、それは秘密兵器として試合を通して定期的に登場するピッチとなった。

Sequence to LHH (Slider backdoor, Fastball in, Splitter Down):

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彼のスライダーはより大きな可能性を秘めている。2023年の空振り率は47%で、横変化と球速を兼ね備えた素晴らしいオフスピードピッチになる可能性がある。彼に必要なのは、スライダーに対して自信を持ち続けることだ。 最初の 2 球が非常に優れているため、現状から使用頻度をそれほど増やす必要はない。

佐々木も球速80マイルのカーブボールを持っていることは注目に値するが、昨シーズン彼が投げたのはわずか2回だった。 以前はカウントの早い段階で時折サプライズ投球として投げていたが、それはほぼ廃止された。

今シーズンに期待できること

佐々木朗希の他を圧倒するような投球はおそらく2024年も続くだろう。健康を維持してマウンド上にいること以外、彼には何の欠点もない。 彼が健康であれば、NPB で彼より優れた投手は誰もおらず、22 歳の天才は、おそらく今年最も楽しみな投手となるだろう。 日本での彼の将来とMLBへの移籍の可能性については、今は待たなければならないが、彼の投球はいつ見ても感動を与えてくれる。